ハーフブリッジでの使用方法の一例 {{:technology:half.png?200|}} 以下にゲートドライブトランスの設計法について記載する。\\ ゲートドライブトランスの設計は基本的に、スイッチング電源のトランス設計法を流用することで可能となる。\\ \\ 1.要求スペックの整理\\ スイッチング電源の方式には、フライバック、フォワード、ハーフブリッジ、フルブリッジなどがあるが、ここでのゲートドライブトランスの駆動回路としては、フルブリッジ方式を用いることにする。もちろん他の方式でも可能である。\\ まず決定しなければならないパラメータは、最小入力電圧Vin(min)[V]、最大入力電圧Vin(max)[V]、出力電圧Vo[V]、出力電流Io[A]、スイッチング周波数f[Hz]、最大デューティ比D[%]である。\\ Vin(min)、Vin(max)は、ゲートドライブトランスの駆動回路に印加される電源電圧のことである。+-10%程度の範囲で最小と最大を設定してやると良いだろう。\\ Voは、ゲートを駆動するために十分な電圧を素子のデータシートから読み取り決定する。ゲートドライブの場合、ターンオフ時に於ける誤点弧を防ぐため、ターンオフ時はゲートに逆バイアスを印加する必要がある。したがって、Voにはゲートを駆動するために十分な電圧を2倍したものを設定する。\\ Ioは、スイッチング電源として設定する場合は重要なパラメータであるが、ゲートドライブの場合は大電流は流れないため、あまり大きな値は設定する必要はない。1[A]もあれば、大型のIGBTモジュールなどでもドライブ可能である。\\ fはゲートドライブに入力するスイッチング周波数を設定する。\\ Dは95[%]とする。\\ \\ 2.コアの選択\\ コア材はスイッチング電源のトランスに一般的に使われるものと同じMn-Znフェライトコアを選択する。形状はEI、EE、EER、PQ、などなんでも良い。ゲートドライブトランスは大電力を扱うわけではないので小型のもので良い。ただし、あまりに小さいと巻線がしにくいため、手で巻ける程度の大きさにする必要がある。\\ \\ 3.選択したコアから必要なスペックを読み取る\\ トランス設計の際に最低限必要になってくる仕様は、最小飽和磁束密度Bs[mT]、最大残留磁束密度Br[mT]、実効断面積Ae[mm^2]である。\\ まず、BsとBrはフェライトコアに使用されている磁性体材料から読み取る。\\ TDKのスイッチング電源用フェライト、PC47PQ20/16Z-12を例とする。\\ このコアに使われている磁性体材料はPC47であるため、PC47のデータシートを参照する。\\ PC47のデータシートによると、Bsの最小が420[mT]、Brの最大が180[mT]と記載してある。\\ Aeはフェライトコア自体のデータシートから読み取る。\\ PC47PQ20/16Z-12は62[mm^2]と記載してある。\\ \\ 4.途中算出\\ \\ 最大磁束密度Bm[mT]を算出\\ トランスのコアはいかなる場合に於いても磁束の飽和は避けなければならないので、\\ Bm[mT]=0.75*Bs[mT]とする。\\ \\ 使用可能な磁束密度変化量⊿B[mT]を算出\\ ⊿B[mT]=Bm[mT]-Br[mT]\\ \\ ON時間ton[s]を算出\\ ton[s]=(1/f[Hz])*(D[%]^(-2))\\ \\ 5.一次側巻線数Npを算出\\ Np=( (Vin(min)[V]*ton[s])/(2*⊿B[mT]*Ae[mm^2]))*10^9\\ \\ 6.二次側巻線数Nsを算出\\ Ns=( (Vo[V]*(100/D[%]))/Vin(min)[V])*Np\\ \\ 7.一次側巻線断面積S1[mm^2]を算出\\ 入力電流Iin[A]を算出\\ Iin[A]=(Ns/Np)*Io[A]\\ 一次側巻線断面積S1[mm^2]\\ S1[mm^2]=Iin[A]/6\\ \\ 8.二次側巻線断面積S2[mm^2]を算出\\ S2[mm^2]=Io[A]/6\\ \\ 以上でゲートドライブトランスの巻き数、巻線の太さが求められた。\\ 実際に制作する場合は、トランスコアのホビンに算出した太さの巻線が算出した回数巻けるかどうかを確認し、巻けなかった場合もうひと回り大きいトランスコアに変更して計算し直す、と言った作業が必要になる。\\