User Tools

Site Tools


Sidebar

製作物
燃焼系
自動車ターボ流用ジェットエンジン
空き缶パルスジェットエンジン

弱電系
半導体式γ線検出器
半導体式α線検出器
AVRプログラム集

強電系
オーディオフライバックトランス
テスラコイル1号機(PWM式)
テスラコイル2号機(DRSSTC)
テスラコイル3号機(DRSSTC)
TIG溶接機
バッテリー溶接機1号機
バッテリー溶接機2号機
HeNeレーザー
ZVSドライバ

化学系
塩化銅エッチング

その他
雑多な物、便利な技など
FETの死亡診断
表面実装部品の取り外し
ICのシリコンダイの取り出し
バッテリー溶接
放射性鉱物探し
工具の消磁
特性不明なコア材の特性調べ
携帯の温度センサーの騙し方



過去のBlog記事一覧

他サイトへのリンク

管理人の連絡先など
管理人のYoutube
管理人のTwitter

power_ele:teslacoilver3

前書き

テスラコイル2号機で大体DRSSTCがどんな動作をするのか、
またおかしな動作をしている際にはどのような状態になるのか、などなど
ノウハウが沢山溜まってきたのでボチボチ本気でまともなテスラコイルを一つ製作してみましょうかね。
と言う事で製作してみました。

土台の製作

dodai1.jpg
はい、なぜかいきなり2次コイルが出来上がっているわけですが(笑
この2次コイルに合う様に土台を製作していきます。
コイルは誘電損の少ない材料を芯にして巻くと余分なエネルギーを芯材に食われずに済むので
Q値を上げやすい訳ですが、今回は予算の都合と製作の容易さから塩ビ管を選びました。

塩ビ管であればそのサイズに合ったフランジが有るので、
今回はそのフランジと木材を使って製作を進めます。

そしてある程度組んだものがこちら
dodai2.jpg dodai3.jpg
塩ビのフランジ部分から1次コイルを巻き始めると
1次コイルと2次コイル間の距離が開きすぎて効率が悪くなってしまうため、
フランジ部分をかさ上げして1次コイルの巻き始め位置が2次コイルの下端とツライチになるようにします。

さて、ここまで来たらもう1次コイルが巻ける状態ですので一旦1次コイルを巻いてしまいます。

1次コイル製作

前回作った2号機で既に1次側共振回路系には凄まじい電流が流れる事が分かっていますので
今回1次コイルはなまし銅管で作り、それをアクリル板のステーで保持する形にします。
そこでアクリル板を加工する訳ですが、いきなりアクリル板をけがくのは意外と技が要るので
ここは機械の力を借りて、一旦欲しいアクリル板の形をCADってしまいます。
そしてCADったモノを等倍でプリントアウトし、それをアクリル板に張り付け、加工をすれば
pr_coil1.jpg
ね、簡単でしょ?

同じようにして穴の位置を微妙にずらしたものを4枚作り、
螺旋状になまし銅管を巻けるようにし、土台上にセッティングします。
この時点で大体の形が見え、設計上のミスなどが見つけやすくなってきますので、
ここで気に入らない箇所があればこの段階で直しておきましょう。後々後悔します(笑
※私はストライクリングの付け忘れをして現在後悔中です(笑
pr_coil2.jpg

多くのトランスと同じ様にテスラコイルも1次コイルと2次コイルはできるだけ近づけた方が効率が良いのですが、
テスラコイルの場合、1次コイルと2次コイルを近づけすぎるとコイル間で放電を起こしてしまい
正味の動作をしなくなります。(DRSSTCの場合ドライブ回路が壊れます)
そこで効率を落とさず、コイル間の放電を防ぐために2次コイルの電位勾配に従い
1次コイルに角度を付けて巻いていくと言う事をします。
今回の場合160V入力までコイル間の放電が起きない様設計しました。

DRSSTCで1次2次共に完全に共振状態にある状態で2次側に現れる最大電圧は大雑把には


Vout = Vin * Q1 * Q2 * N [V]
Vin : 1次側スイッチング電源電圧[V]
Q1 : 1次側共振回路系のQ値
Q2 : 2次側共振回路系のQ値
N : 1次2次コイルの巻き数比

で表されるので(※)、コイルのどの部分が何Vまで電圧が上昇するのかある程度予測する事ができます。
(※テスラコイルの出力電圧の計算には諸説あり過ぎて、何が正解なのか私も良く分かっていないのですが
この式かVout = Vin * N * Q1辺りが正しい気がします)

さて、後はひたすら巻いていく訳ですが
pr_coil3.jpg pr_coil4.jpg pr_coil5.jpg
この1次コイルの保持方法は失敗ですね。
最初のうちはスイスイ巻けるのですが、段々と穴の中を銅管が滑っていかなくなってきます。
何度も指でコイルをグイグイ押すので、その部分が水ぶくれになってしまいました。
pr_coil6.jpg
しかしここまで行ったらもう引き返す事もできません。
CRC556で滑りを良くしながら少しずつ巻いていきます。
pr_coil7.jpg pr_coil8.jpg

トロイドの製作

一般的にコンデンサと言えば誘電体にフィルムやセラミックを使った物が多いのですが、
テスラコイルのようにあまりに印加電圧が高い場合は、誘電体として空気を使うものが有ります。
このトロイドも同じで、トロイドの表面と地面の間にある空気を誘電体としたコンデンサを作ります。
今回は(今回も)ホームセンターで売っているアルミダクトを丸めた物をトロイドとして使用します。
toroid.jpg
この辺はとりあえず大きめのトロイドを作っておき、
後で共振周波数を合わせる段階になった時に微調整をするという方法が楽です。
容量を計算してトロイドを作っても、ぴったり合致しない事の方が多いですからね。

さて、ここまでで
toroid1.jpg
この様な形になり、随分とサマになってきました。
この段階でもう2次側共振系は完成していますので、
ここで2次側回路の共振周波数を計測しておくと良いでしょう。

回路製作1

前回の制御回路は使いづらい事この上ない上に、パワー段の効率も出ないので大幅に変更。
circuit1.jpg
パワー段も前回使っていたSUP85N-15(MOSFET)からIGBTのフルブリッジに変更。
circuit2.jpg
回路の固定にタイラップを使うなど、なかなかおかしな事をしています(笑
その上IGBTは負性抵抗なので本来はバランス抵抗無しに並列に繋いではいけないのですが、3並列にしてしまっています※

※これは実際にやってみてから分かった事なのですが、
DRSSTCの場合、IGBTが壊れる場合素子全体が温まるよりも遥かに早く内部が破壊するため
短時間の駆動ではこのように固定が適当でも問題ないようです。
しかし、バランス抵抗無しに並列に繋いでも特に悪影響も見られず、問題なく動く理由は未だに分かりません。

動作確認1

ここまででテスラコイルを動作させるために必要な最低限の要素が出揃いましたので、
1次側共振回路系の共振合わせなどをしつつ動作テストを行います。
この時が一番故障が多いので、毎度毎度ドキドキします(笑
spark1.jpg spark2.jpg
うーん、1メートルというところでしょうか。
まだまだ行けるハズ・・・とスライダックを捻ると・・・回路から火花が上がり、放電が弱くなりました。
・・・さあ、デバッグの開始です。

回路製作2

まず目に付くのが1次側共振回路のコンデンサの膨らみです。
spark3.jpg
電力回路でのコンデンサの破壊としては電流容量オーバーと耐圧オーバーの2種類が主にありますが
このコンデンサは故障後すぐに触ってもそれほど熱くなっていませんでしたので
電流容量オーバーの可能性は低そうです。
がんばって等価直列抵抗の低いコンデンサを選んだ甲斐がありました(笑
となると、残るは耐圧オーバーが考えられます。

テスラコイルの場合1次側共振回路のコンデンサには

Vc = Vin * Q1 [V]
Vc : コンデンサ端子電圧

なる大きな電圧が掛かりますので、その可能性は大きそうです。
という事で、1次側共振回路用のコンデンサを2直2並列にして耐圧を稼ぎ対処します。

次に目に付くのが先ほど火花が散った箇所です。
破裂音も火柱も、スライダックの唸りも無かったのでIGBTは無事な様です・・・が
spark4.jpg
Cスナバ用のフィルムコンデンサの足が溶け落ちています。
こればかりはもう回路を修正するほか手の打ちようが無いので、スイッチング段の回路修正で対処します。

そして出来上がったものがこちら
spark5.jpg
ムチャクチャやってますが、意外と良い働きをします(笑

動作確認2


今度は問題なく動きました。放電距離は140cmという所でしょうか。
放電の際の音も凄まじく、まさに爆音です。

もう少しIGBT的には入力電圧を上げる余裕が有るのですが、
もうこの場所では放電が天井の蛍光灯に当たってしまうため実験ができません。
また、消費電力もそろそろ一般的な100Vのコンセントの限界な様で
しばらく放電をさせているとプラグの金具部分が暖かくなってきてしまいます。

これ以上放電距離を伸ばすためには騒音対策や、200Vラインから電源を取るなど
一般家庭では出来ないセットアップが必要になってきてしまいますので
この辺が日本でテスラコイルを作る上での一つの限界点ではないでしょうか。

3号機完成とその後

と、言う事でこのテスラコイルの開発は一旦ここで終了とします(2011/07/28)
後は上で紹介に使わなかった写真などを雑多に。
また、このテスラコイルは完成後様々なイベントで使用してきましたので、その動画や写真なども一緒に掲載。
after1.jpg after2.jpg
開発の中で殉職したIGBT達                             開発中の作業机、汚さがヤバイ
after3.jpg after4.jpg
2次側共振合わせの回路図                         共振状態時の波形、Q値が高い程矩形波が歪む
after5.jpg after6.jpg
感熱紙に放電痕を残す実験                     2次元的にしかデータが残らないためあまり役に立たず


それぞれのパート毎にオーディオ駆動し、後に各パート毎の動画を集約し1本に編集。
インターラプタの誤動作も無く、完璧に動作している。


オーディオ変調動作中のテスラコイルを高速度カメラで撮影したもの。
パルス駆動されている事が見て取れる。

after7.jpg
ArtsChiyoda3331で展示をした際の写真、左のテスラはgo_oginoさんの物。


3331で展示をした際の動画(GIGAZIN様撮影)、楽曲提供クエスチョナーズ
閉鎖された部屋で反響する音がうまい事曲と合い、荘厳な雰囲気に。


上と同様、3331で展示をした際の動画(GIGAZIN様撮影)


謝辞

このテスラコイルは数多くの方々からの協力の下に製作されています。
私一人の力だけではこれだけの物を作り上げる事は出来なかったでしょう。
協力してくださった方々に深く感謝申し上げます。
未だ技術の「ぎ」の字も分からぬ様な若輩者ですが、
よろしければこれからもご支援の程よろしくお願い申し上げます。

スポンサーの皆様

部品多数提供、開発環境提供:東海大学
テスラコイル用楽曲提供:クエスチョナーズ
IGBT、共振コンデンサ提供:go_ogino
電力用電解コンデンサ提供:shirohebi

発表の場を提供して下さった皆様

アーツ千代田3331
SOLAR FREQUENCY
東海テレビ-くりびつ!
O'Reilly-Make
ここをご覧の皆様

本当にありがとうございました。
ではでは。


power_ele/teslacoilver3.txt · Last modified: 2013/03/19 21:35 by hirosi